ふだんよく耳にする『野球』『サッカー』『競馬』など、ラジオでのスポーツ中継。
言葉だけで試合やレースの状況を理解するのは大変だと思いませんか?
この記事を書いた人
りーまん
・中卒でラジオ制作会社に入社して10年勤務
・ワイド番組、スポーツ中継、ANNGなど担当
・現在はフリーで音声コンテンツプロデューサー、ディレクター
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X(旧Twitter)⇒りーまん@ただの中卒
この記事では「ラジオでのスポーツ中継の制作方法」について解説。
実は様々なアイデアや工夫によって、聴かせ方に工夫をしています。
ラジオでのプロ野球中継の制作
プロ野球中継の制作方法
- プロ野球中継のスタッフは4人~6人体制
- プロ野球中継の全国ネットでの制作
- 他局からの委託制作
- 中継時のスタッフの役割
- 試合終了後の流れ
プロ野球中継のスタッフは4人~6人体制
ラジオのプロ野球中継は4人~6人体制のスタッフで制作されています。
解説者、実況アナウンサー、ディレクターがそれぞれ長机に並んで座り、後列にミキシングを担当するミキサーがいます。
他にも解説者のお弁当の買いだしや、データをまとめる中継アルバイト、ホーム・アウェーチーム用のベンチレポーターも。
プロ野球中継の全国ネットでの制作
全国ネットではキー局といわれる中継局が制作を行っています。
ニッポン放送や文化放送など。
全国ネットは自社の番組名を言うことはNG。
必ず『ニッポン放送の制作で~』『文化放送の制作で~』と言うルールがあります。
全ての地方局が同時刻からの放送開始なら良いのですが、他局によっては放送開始時間もバラバラ。
なので他局が放送を開始する時間にあわせて『ポーズ』と呼ばれる時間を作り、実況アナウンサーは実況を一度止めます。
ポーズの例
・18時03分
・18時18分
・18時23分
※全国ネットの場合では、この時間から地方局が番組を開始するケースがあります。
ポーズの時間を越えたら他局から聴き始めたリスナーが分かりやすいように、改めてプレイボール時間やイニング・得点、どちらがリードをしているのか?を説明。
CMチャンスはイニング終了後。
これにも決められたルールがあります。
キューワードと呼ばれるアナ尻で各局はCMチャンスに入るのです。
CM入りキューワード
・イニング終了時
「~〇〇球場は〇回表・裏を終わり、〇対〇で〇〇が〇点をリードしています!」
・イニング中の投手交代時
「~〇〇球場から〇〇対〇〇〇回戦を、〇〇の(解説・実況)でお送りしています!」
決められた『ワード』を使うことによって、CMチャンスに入るルールを統一。
では、CM明けはどこから実況アナウンサーがしゃべり出せば良いのか?
イニングを〆る『キューワード』を言ってから、70秒後に実況がしゃべり出すというルール。
例えば投手交代時では、1試合何回のCMチャンスを設けるのか?なども決まっているのです。
他局からの委託制作
中継は委託をしてきた局だけのローカル放送となります。
現在は制作費が削られている放送局がほとんど。
例えば関西のホームチームが関東で遠征の試合を中継するには、地元局はスタッフ分の旅費や解説者の手配などがあります。
その場合は関東のキー局に委託制作をお願いをして予算を浮かせます。
全国ネットとの制作の違いは、1局のみの中継のため、ポーズと呼ばれる時間はありません。
中継時のスタッフの役割
解説者
局と契約をしているプロ野球OBが解説。
野球の解説に関してはプロなので、特にディレクターから指示は出しません。
その日のポイントや番組企画など、中継中の番組の流れを事前に説明して協力をして頂きます。
実況アナウンサー
番組開始から番組終了まで進行しながら、試合を実況して描写します。
リスナーの頭に映像が浮かぶよう、イニング、時間、得点、選手は右打者なのか・左打者なのか?
守備体系は?何球目?球種は?など、ありとあらゆことを細かく描写をして実況をします。
大事なことは、途中からラジオを聴き始める人に、すぐ試合の状況を伝えることができるのか?
これが大事なポイントになってきます。
特にイニングや得点。どちらがリードをしているのか?は、真っ先にリスナーが知りたい情報だからです。
情報アナウンサー
全国ネットでは両チーム情報を兼ねる場合があります。
基本は一塁側・三塁側にマイクを設置し、担当チームの情報をレポート。
試合前に取材した情報や試合中のホームランコメント、タイムリーコメントなども、随時中継中にレポートを入れます。
試合終了後は、放送時間までに間に合えば監督談話などもレポート。
3連戦なら前日か翌日に実況を担当するので、試合の流れも把握して実況日に生かします。
ディレクター
試合中はスコアシートの作成、投球カウンタの操作。
スタジオとのやりとりやCMあけのキュー出し、他球場の速報チェック、記録の調べものなど。
他球場の速報などを実況アナウンサーに読ませるタイミングは、プレーが止まったとき。
ファールになったときや、打者が入れ替わるタイミングの時間を利用して手渡します。
球場での現場終了の〆時間は本社から連絡が入り、ディレクターが放送室全員に上がり時間を指示します。
その他SNSの更新や、解説者のタクシー手配、次回のスケジュール確認など。
ミキサー
中継時のミキシングは、全て球場にいるミキサーにかかっています。
実況の声とお客さんの歓声のバランスなど。
試合中はディレクターと連携しながら、音作りを進めています。
中継アルバイト
解説者のお弁当やスタッフの飲み物などの買い出し。
試合中は他球場の速報をランニングスコアに書き込んで、随時ディレクターに手渡します。
アルバイトスタッフもディレクターと連携をしながら中継を進める大事なスタッフ。
試合終了後の流れ
試合が終わるとヒーローインタビューや監督インタビューがあります。
中継のまとめも含めると、試合終了から110分~5分くらいで、現場からの中継は終了。
しかし番組はそういうわけにはいきません。
試合が早く終わるときもあれば、遅く終わるときもあります。
早く試合が終わった場合はスタジオから、その日に行われたプロ野球を実況音声を交えて振り返り。
またキー局は全国ネットで試合が早く終わりすぎた場合には、各局に向けて決められた時間まで番組制作の保証。
これは後フィラー番組と呼ばれていて、別のスタジオで制作されます。
スタッフがいちばん焦るのが、早く試合が終わりそうな展開になった時。
いざそうなった時のために、試合前や試合中に準備をしています。
ラジオでのサッカー中継の制作
サッカー中継の制作方法
- 基本スタイルは野球中継と変わらず
- サッカー中継時の描写
基本スタイルは野球中継と変わらず
スタッフの人数は基本、野球と変わりありません。
中継スタイルはピッチレポーターが1人の場合や、ゴール裏にもスタッフを配置して、より臨場感を伝えています。
全国ネットでの中継はワールドカップくらい。
局によっては全く中継をやらない場合もありますし、地方では地元Jリーグクラブのホームゲーム中継があります。
サッカー中継時の描写
基本的には野球と中継スタイルは一緒です。
前半〇分を経過して、どっちがリードしているのか?誰のゴールで得点が決まったのか?
途中から聴き始めたリスナーにもわかるよう、1分に1回くらいの頻度で実況アナウンサーは伝えています。
ユニフォームの色は?右から左に攻めているのはどっち?メインスタンド側なのかバックスタンド側なのか?など。
前半後半とCMチャンスが特にないので、ハーフタイム中にすべてのCMを消化します。
カップ戦ではない通常のJリーグのリーグ戦であれば、延長もないので時間が読みやすくなることも。
2時間しか番組の枠をとっていない場合は、ヒーローインタビューすら入らない局が多いと思います。
サッカーは展開のスピードが、野球よりも図抜けて早いです。
ラジオでの競馬中継の制作
基本スタイルと中継時の描写
ラジオでの競馬中継は、局によって多種多様です。
全てのレースを伝えている局もあれば、メインレースのみなど。
実況アナウンサーはレースの中継時は双眼鏡を持ちながら馬を追って描写しています。
先頭は〇番の〇〇、2番手は〇番の〇〇、最後方は〇番の〇〇など。
実況もレースによって交代する場合があるので、これからレースを実況するアナウンサーは、同じように双眼鏡を持ち後方に立って練習しています。
入線後のオッズや払い戻しなどは、即座に別スタッフがプリントアウト。
実況アナウンサーやディレクターに手渡しをして中継内で読み上げてもらいます。
競馬中継のスタッフは、まったく馬券に興味がないか、馬券を買いまくるかの二極端。
まとめ:ラジオでのスポーツ中継制作は筋書きのないドラマ
ラジオのスポーツ中継の現場では、日々様々なことが起こります。
スポーツがライブで行われているからこそ、筋書きのないドラマに遭遇。
ふだん何気なくラジオから流れてくるスポーツ中継。
映像がない分、リスナーにストレスを与えないよう、常に現場スタッフは工夫を重ねています。
この記事を読んだ方は、中継中の現場の裏側も想像してみると面白いかもしれません。